英語の論文を書くときの基本

 英語の論文においても、「論文の基本」に書いてあることと、基本は同じである。ここではそれと重複することもあるが、特に英語論文において、注意するべき点を述べる。



  1. 英英辞典を用いること。

    日本語と英語は必ずしも対応しない。和英や英和で調べただけでは、言葉の本来の意味するところを十分知ることはできない。また、用法についても同様である。英語の論文を書くときは必ず英英辞典を用いて、言葉の意味を英語で理解しなければならない。

  2. 言葉の用法には細心の注意が必要。

    これは言うまでもない。文法的に、言葉の用法的に間違いのない文章でなければならない。たとえば、次のような点があげられる。

    • 他動詞と自動詞を正しく用いる。
    • 可算名詞と不可算名詞。
    • 冠詞。
    • 主語と述語の数の関係が正しい。


  3. あいまいさのない文章であること。

    科学論文であるから、文学作品のような名文である必要はない。特に非英語国民が書くのだから、名文を書くことは困難である。論文では明らかな文、あいまいさの無い文、誰がどう読んでも著者の意図したこと以外に読めないような文、二意性の完全に排除された文であることが最も重要である。

  4. 時制を正しく用いる。

    論文の時制については、基本は「真理は現在形、特定の事実は過去形あるいはそれぞれに適切な時制」を用いる。だからといって、観測の結果をすべて過去形で書かなければならないわけではない。いわゆる「したした日記」のようにならないように、適切に現在形と過去形を用いて書く方がよい。

  5. できるだけ断定的に書く。

    あいまいさを排除するためには、"could", "might", "may", "maybe"などを用いないで、できるだけ断定的に書くこと。そうすることによって、明瞭な文章になる。

  6. 1次元的な文章であること。

    A. J. Leggettの樹に示されるように、英語の論文は1次元的に論理や論旨が展開されなければならない。読者が文章をはじめから読み始めて、読み進むにつれてそこまで書かれたことですべて理解できるように、順序立てて書かれていなければならない。2次元的に論旨を並べて、最後になってはじめて全体が理解できるような書き方をしてはいけない。

  7. 文のつながりが明確でなければならない。

    読者が文章を読み進むとき、一つの文とそれに続く文の関係が明確になっていなければならない。論理の飛躍がないことはもちろんであるが、文と文の関係(説明、対称、並置、展開など)を示す接続詞・接続句を適切に挿入する。

  8. 一つの文(sentence)が長すぎないようにする。

    日本語でも英語でも長すぎる文はわかりにくい。一つの文は分かりやすくするために、適切に短くするべきである。修飾語・句・節が続くことで長くなったり、説明や並置によって長くなりがちであるが、そのような場合は適切に複数の文にするべきである。英語の場合、一つの文はたかだか20語以下が望ましいと言われる。一方で短すぎる文ばかりが続くと、文と文の関係があいまいになりやすいので、かえってわかりにくくなることもある。適切な長さに書くことが必要である。

  9. 一つの段落 (paragraph) が長すぎないようにする。

    一つの段落には一つのまとまった内容が含まれる。そのようなまとまりは1ページを超えるような長いものには通常ならない。段落も適切な長さにして、文章が軽快に進むように気をつけて書くべきである。段落は複数の文から構成されるが、一つの文が一つの段落くを構成するというのは好ましくない。文というまとまり、段落というまとまり、それぞれ適切な長さがある。

  10. 主語と述語がはっきりした文章を書くこと。

    これもあいまいさを排除するためのものである。できるだけ能動態で、主語を明示した文章にする。受動態や分詞構文などはできるだけ用いない。主語として "We" を用いることを避けないべきである。一方で "It", "This", "That" などはできるだけ用いない。

  11. 修飾語は被修飾語にできるだけ近くする。

    何が何を修飾しているのかが明確である文章にするべきである。これは日本語の場合も同じである。



英語論文を書くときの注意点

論文の書き方