要旨 (Abstract)




 論文を読むとき、読者はまず題名をみて、次に要旨(abstract)を読む。忙しい読者はそこで論文を読むのをやめてしまうかも知れない。abstractが興味を引けば、あるいは重要なことが書いてあると思わせられれば、読者は論文の内容を読むだろう。また、題名とアブストラクトはそれだけで独立して論文検索結果に表示されることもある。気象集誌の場合、日本語要旨が「天気」に掲載される。このように要旨(abstract)は、題名とともに論文の顔となる。

 要旨(abstract)は、「まとめ」(summary)ではない。まとめの章は論文の最後に別に設けられる。要旨(abstract)は、その論文で最も重要な内容を書くところ、読者にこれだけは伝えたいという内容を書くところである。ときどき、要旨とまとめがほとんど同じ内容の論文ドラフトを見かけるが、これは正しい要旨ではない。

 論文誌により大旨の要旨(abstract)の長さが決まっている。気象集誌や「天気」などでは特に決まった長さはないが、日本語の場合要旨は200〜400字程度、英語の場合は200〜300 wordsであろう。いずれにしても、A4の用紙にダブルスペースで、最大でも1ページに収まる程度の長さである。要旨の長さに決まったものがなくても、可能な限りコンパクトにまとめなければならない。1論文1主題とすると、論文の最も重要な点は、それほど長くないはずである。これぐらいの長さにまとめるためには、論文の内容の取捨選択が必要である。そのため特に入念な推敲が必要なところである。この長さに論文の最も重要な点を盛り込むためには、一字一句を無駄にできない。

 要旨(abstract)には論文の最も重要な点を盛り込まなければならないが、だからといって前置きなしに結果だけを書けばよいかというとそうではない。要旨(abstarct)はそれだけで完結していなければならない。それだけを読んで主題から、論文の独創的な点、得られた重要な結果とその意義が分かるようになっていなければならない。そのためには概ね次のような内容が盛り込まれていなければならない。

  1. 論文の主題とその論文が問題とした点は何か。
  2. その問題はなぜ重要か。
  3. この研究の「切り口」はどのようなもので、それはどの点で独創的なのか。
  4. 最も重要な結果は何か。
  5. その意味するところと意義は何か。


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