気象集誌投稿論文の査読に際しての指針 (個人的な見解)
個人的な見解として気象集誌の投稿論文の査読の指針を以下にまとめます。これは気象集誌編集委
員会の公式な指針ではありません。私が編集委員としてレフリーに査読をお願いするときに、あくまで個人的にお願いするもので、必ずしもこれに従う必要はありません。ただ査読をする際の参考にしていただければ幸いです。
主要な確認事項
- 適切性:
気象集誌の論文として適切かどうかを投稿規定を参照して判断してください。
- 意義:
論文の主題が意義あるものか。意義がイントロダクションに明確に書かれているか。
- 新規性:
すでに解決されてしまっているテーマでないか。他の論文に(投稿者による2重投稿も含めて)すでに掲載されている内容ではないか。主題、問題点、視点、手法、データ、結果、考察の少なくとも
どれかひとつには、これまでにない新しい点があるか。
- 正確性:
内容に間違いがないか。理論とその適用、データとその利用方法・解析方法、モデルの利用方法・適用方法などについて。
- 論理性:
内容が論理的に書かれているか。論理に飛躍がないか。
- 一貫性:
論文が首尾一貫して矛盾がないか。
- 明晰性:
内容が(文章も含めて)明確にかつ理解が容易なように書かれているか。また、あいまいな点がないか。特に結果や考察が分かりやすく示されていなければなりません。
- 完結性:
提起された問題(通常はイントロダクションで)について、解が与えられる(通常は結果や考察で)というように、ひとつの論文の中で自己完結していて、中途半端に終わっていないか。
- 簡潔性:
不必要に文章が冗長になっていないか。記述の不要な繰りかえしがないか。ただし、正確であるため、あるいは理解しやすくするためのある程度の冗長性は可とします。
- 発展性:
要件ではありませんが、今後の発展が書かれてあることが望ましいと思います。
その他
- 必要な参考文献が参照されているか。特に類似の研究については、既存の到達点を明らかにするために引用が不可欠です。また故意に引用をしないことで当該論文の新規性を出そうとするような場合は、大きな問題と考えます。
- 図が明瞭にかつ理解しやすく描かれているか。座標軸や等値線のラベルが適切に大きく描かれているか。階調表示などが印刷に耐えられる程度に明瞭かなど。
- 図・表の説明は、簡潔にして、かつ過不足なく書かれているか。
- 図・表がその論文に必要かつ十分なものであるか。
- 査読の結果のコメントは、無記名で別紙に書いてください。その場合、次の形式に書いてもらえるとよいでしょう(これも一つの例で、この通りである必要はありません。)
- 査読日
- 論文題名(整理番号)
- 著者名
- 総括:論文全体の内容と査読結果を総括して、気象集誌に掲載が可能かどうか。現状で掲載できないのであれば、改訂により掲載の可能性があるのか、あるいは改訂稿を読んでからあらためて判断するのかなどをまとめてください。掲載不可の判断の場合はその明確な理由を示してください。
- 主要な問題点:論文に本質的な問題がある場合は、具体的に論文中のどの部分の何がどのように問題であるのかを書いてください。何ページの何行目など、どの部分であるのかをはっきり書いてください。
- その他の問題点:論文の採否の判断には影響しないが、ケアレスミスなど改訂が必要な部分を指摘してください。この場合も、何ページの何行目のように具体的に示してください。文章の分かりにくいところも指摘していただくとよいでしょう。ただし、英語については査読者の方は、明らかな間違いをのぞいて逐一指摘していただく必要はありません。
査読者が避けるべきこと
- 査読者と著者は基本的には対等で、高圧的態度での意見の述べ方は避けるべきです。個人的な誹謗中傷はもってのほかです。ちなみに私が査読意見を書くときは「である」調ではなく、「です。ます。」調で書くように心がけています。ただし、これは個人の判断によって決めていただくことで、強制されることではありません。
- 査読者は客観的であるべきです。査読者個人の見解が著者と異なるかどうかヘの言及は査読意見に含めるべきではありません。
- 査読意見は論理的で明晰であるべきです。漠然とした指摘ではなく、どの点の何がどう問題であるかを示してください。
- 基本的には査読意見には個人的感想は含めないようにします。
- 間違っていると判断できないものについては、その旨を示してください。
基本的に査読者名の秘匿は厳格に守られますが、査読者自身が自分の氏名を明
かしてよいと考える場合は、氏名を明かすことも可能です。ただし、それに伴
う不利益については自己の責任とします。
また、査読の依頼を受けた論文が、明らかに自分の研究内容と重なる、あるいは意見を異にするものであるとわかったときは、その旨を編集委員に伝えて、査読を辞退することを薦めます。一般的にそのような場合は、公正に査読をすることが困難と考えられます。