「静岡県掛川市で発生した突風」
2007年4月14日
共同通信他の報道によると、静岡県掛川市宮脇地区で2007年4月14日未明(午前2時から3時頃)に突風による家屋被害が発生した。掛川市での正確な時刻は報道されていないが、近くの島田市では同日02:20AM(日本時間)に約520世帯が停電した。突風により角材が電線に引っ掛かったためということなので、突風の発生した時刻は概ねこの時刻前後であっただろう。掛川市では突風の被害が市北部から中部にかけて幅200m、長さ4..5kmにわたって発生したということである。風速の記録としては、掛川市消防本部に置かれた風速計で午前2時ごろに瞬間最大風速26.1m/sが記録された。気象庁は突風の原因をダウンバーストや竜巻など特定することは困難であったと発表した。
気象庁では「突風」を「急に吹く強い風で継続時間の短いもの」のように定義している。これは様々な原因によって起こるが、地上に被害をもたらすものとしてはダウンバーストと竜巻がよく知られている。しかしながら突風の原因がダウンバーストか竜巻であるのかを特定することは困難である。今回の掛川の突風のように夜に起こった場合は、目撃証言が得られないので特に困難である。突風が起こるような気象状況のときはたいてい上空に強風が吹いていることが多い。ダウンバーストは積乱雲の下降流によってこの強風が地上付近に運ばれることと、地上にぶつかった下降流が水平に広がることの両方の原因で起こる。一方、竜巻は積乱雲の中の強い上昇流のなかで起こる。このようにダウンバーストと竜巻は異なる現象であるが、これらは同時に起こっても不思議ではない。突風の原因がどちらによるものかは災害という点からは本質的ではない。重要な点はどちらも発達した積乱雲がもたらすということである。ダウンバーストや竜巻などの突風をもたらす原因の多くは発達した積乱雲である。
実際、この日の掛川の突風が発生したとき、日本海に東に進む低気圧があり、それからのびる寒冷前線が、突風の発生した4月14日午前2時頃に静岡県掛川市・島田市付近を通過している。この寒冷前線に沿って発達した積乱雲がならんでおり、突風が発生した時間帯には、その付近を発達した積乱雲が通過していた。通常のレーダでもこのような積乱雲を観測することができる。しかしながら、その中でどのような風が吹いているのかは、ドップラーレーダーとよばれる、降水だけではなく風も観測できる特殊なレーダでなければ観測できない。ダウンバーストも竜巻も極めて局地的な現象であるので、高解像度の観測が必要である。近い将来、気象庁が整備するドップラーレーダーが、突風をもたらす積乱雲の検出に貢献することが期待される。
(2007年4月14日)
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