「春の嵐」

2007年3月5日 

 全国的に今日、2007年3月5日は風が強く、春の嵐が吹き荒れた。東京や札幌では30m/sを超えるような強風が記録された。この強風は日本海を発達する低気圧が通過するのに伴うもので、先月14日に全国的に強風が吹き荒れた「春一番」と同じ現象である。ただ、はじめての南よりの強風だけしか「春一番」と呼ばれない。「春二番」とはいわないのである。そう呼ばれないにしても先月の春一番と同様に、全国各地で強風に伴う様々な被害をもたらした。

 冬から春に変わるころ、このような強風を伴い急速に発達する低気圧がしばしばみられる。低気圧が発達するためのエネルギー源は、北側の冷たい空気と南側の暖かい空気が接していることである。冷たい空気は重いので、暖かい空気の下にもぐり込もうとする。そのエネルギーで風を起こし、低気圧が発達するのである。ただし低気圧ぐらいに大きな運動では、地球の回転を感じるので、冷たい空気は暖かい空気の下にまっすぐもぐり込むことができず、渦を巻くようにもぐり込もうとする。これが低気圧の渦である。このため低気圧は北側の空気が冷たければ冷たいほど、南側の空気が暖かければ暖かいほど、大きなエネルギーがあることになり、低気圧は発達する。もちろん低気圧の発達はこれだけでは決まらないが、概ねこのような南北方向の温度差があるほど強い低気圧になる。確かに5日はこの季節にしては気持ちが悪いほど暖かく、天気予報では明日は吹雪になるほど寒くなるのだそうだ。

 低気圧の東側では暖かい南風が吹き、西側では冷たい北風が吹く。この特徴はすべての中緯度にみられる低気圧(温帯低気圧)に共通することが、20世紀に発達した気象力学によって説明される。実際の低気圧のこのような特徴や、三寒四温といったこの季節の特徴、さらには低気圧の構造や大きさが、気象力学では簡単な数式で表すことができる(簡単といってもノートに書くと何ページにわたるほどの量の数式である)。これが気象力学の理論の大きな力の一つである。

 この理論は、発達する低気圧がこのような強い南風を伴うことを説明する。ただし強風の理由はそれだけではない。低気圧に伴う強風の中でも、雨が降るときに特に強い風が吹くことを経験したことはないだろうか。雨が降るときは下降気流が起こり、上空の強い風がこの下降気流で地上にまで運ばれてきて強風となるのである。さらに下降気流そのものも地面にあたって四方に広がり、強風を起こすことがある。

 降水は低気圧に伴う寒冷前線のところで強い。そのため寒冷前線のところでは特に突風が起こりやすい。図に示した気象庁レーダには、寒冷前線に沿って強い降水帯がみられる。このようなところでは強い雨だけでなく強風が起こっていると思われる。このレーダの図をよく見ると、降水帯は直線上ではなく、ところどころ特に強かったり、逆にきれたり、あるいはフック状の構造をしているところがある。このようなところは、激しく風が変わっていることがあるので、特に注意が必要である。

(2007年3月5日)





図1: 2007年3月5日18時(日本時間)の気象庁天気図。




図2: 2007年3月5日20時(日本時間)の気象衛星の赤外雲画像。




図3: 2007年3月5日20時20分(日本時間)の気象庁レーダー画像。




図4: 雲解像モデルCReSSによる2007年3月5日20時(日本時間)の予報。カラーレベルは降水強度。赤い等値線は地上気圧分布。矢印は地上風である。




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