-
坪木和久・榊原篤志, 2006:
雲解像モデルを用いた台風に伴う局地豪雨の量的予測実験:
− 2004年10月20日の台風0423号に伴う近畿地方北部の豪雨を例として −.
[PDF:2.5MB]
自然災害科学,
Vol.25, No.3, 351 - 373.
-
Kazuhisa Tsuboki, 2006:
High-resolution simulations of high-impact weather systems
using the cloud-resolving model on the Earth Simulator.
[draft PDF:5.8MB]
High Resolution Numerical Modeling of the Atmosphere and Ocean, Springer, New York, Wataru Ohfuchi and Kevin Hamilton (Eds),
(accepted).
-
坪木和久, 2007:
台風0423号に伴う局地豪雨の量的予測実験.
[Draft PDF:5.7MB]
月刊海洋「台風研究-II」,
Vol.39, No.3, 198-210.
-
坪木和久, 2005:
雲解像モデルを用いた台風の高解像度シミュレーション
-2004年の台風18号・23号について-
[Draft PDF:2.5MB]
月刊海洋, No.24, pp.186-193.
-
Wataru Ohfuchi, Takeshi Enomoto, Hideharu Sasaki, Yoshikazu Sasai, Masami Nonaka,
Bunmei Taguchi, Kazuhisa Tsuboki, Tatemasa Miyoshi, Nobumasa Komori
and Akira Kuwano-Yoshida, 2006:
Understanding and Forecasting High-Impact Phenomena in the Atmosphere and Ocean.
[PDF:2.8MB]
Annual report of the Earth Simulator Center, April 2005 - March 2006,
pp.65 - 69.
-
Kazuhisa Tsuboki, 2005:
High resolution modeling of multi-scale
cloud and precipitation systems using a cloud-resolving model.
[PDF:653kB]
Annual report of the Earth Simulator Center, April 2004 - March 2005,
pp.79 - 84.
-
坪木和久, 2006:
雲解像モデルを用いた気象のシミュレーション.
東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティングニュース,
Vol.8, Special Issue 1, 39 - 53.
研究報告
課題番号:17G−C1
研究課題名:「台風に伴う強風と豪雨の超高解像度数値モデリング」
(1) 目的・趣旨
台風の強風と豪雨による災害を軽減するために、またそれらのメカニズムを解明するために、雲解像モデルCReSS (Cloud Resolving Storm Simulator) を用いて、超高解像度で大規模な数値シミュレーションを行う。特に台風が日本に接近したときの強風の発生や、降水の集中化のプロセスをモデル出力の解析により明らかにする。これによりこれまで解像することができなかった強風と豪雨の微細構造を明らかにする。さらに雲解像モデルによる豪雨などの予測の量的評価を行い、局所的ハザードマップの作成に寄与する。
(2) 研究経過の概要
日本付近に接近した台風について、雲解像モデルを用いたシミュレーション実験を行った。強風をもたらした台風として2004年の台風0418号、豪雨と洪水をもたらした台風として2004年の台風0423号について、水平解像度1kmでの高解像度シミュレーションを行った。また、本研究を進めるなか、2006年9月に宮崎県延岡市で竜巻を伴う台風0613号が観測された。この台風について水平解像度500mでシミュレーションを行い、台風全体と台風に伴う降雨帯を再現した。さらにこの降雨帯について、水平解像度75mでシミュレーションを行い、降雨帯を構成するスーパーセルとその内部で発生する竜巻のシミュレーションを行った。これらの計算は地球シミュレータなどの大型並列計算機を用いて行った。
本共同研究はその発展として科学研究費補助金基盤研究A「台風に伴う豪雨の高精度量的予測と降水形成機構の解明」(研究代表者:坪木和久)が採択され、平成18年度から沖縄県で、ドップラーレーダーを主体とした観測を実施している。また、本研究課題の一部として、沖縄県多良間島に自動気象観測装置を設置し継続的観測を行っている。
(3)研究成果の概要
台風0418号のシミュレーションでは、沖縄県名護市を通過する前後の24時間について計算を行った。台風の移動は観測に対応しており、中心気圧も名護市を通過するとき、観測と同じ程度の920hPaまで低下するのがシミュレーションされた。台風に伴う強風の最大域は眼の壁雲付近に存在し、最大で80m/sに達する強風が計算された。台風の雲についてPOV-Ray(Persistence of Vision Ray Tracer)により3次元可視化とアニメーション化を行った。その映像は非常にリアルで、あたかも衛星から台風を観るようである。
台風0423号の予報実験では、2004年10月19日12UTCを初期値として30時間の計算を行った。計算の結果は、台風中心の経路、中心気圧、降水の分布などを非常によく再現した。特に台風の北側から東側に観測されたレインバンドなどがよく再現された。この台風に伴い西日本の多くの地点で、50mm/hrを超えるような激しい降水が観測されたが、この予報実験ではそのような激しい降水についても、降水強度とその時間変化の両方を精度よく予測した。多くの地点で観測された急激な降水強度の増大が予報実験でもよく再現され、これが上空のレインバンドの侵入と対応していることが示された。近畿地方北部の大規模な洪水をもたらした降水についても量的によく再現された。降水について地上観測と統計的に量的評価を行い、雲解像モデルが台風に伴う豪雨の予測に有効であることを示した。
台風はしばしば竜巻を伴うが、台風0613号はその例である。500m解像度の実験では、鹿児島県西方海上にある台風中心の東側に顕著な降雨帯が形成され、延岡市で竜巻が発生した時刻に発達した降雨帯が予報された。この降雨帯を構成する積乱雲は、スーパーセルの特徴を持っていた。75m解像度でも計算領域内にいくつかのスーパーセルがシミュレーションされ、そのうちのひとつが強い竜巻を伴っていた。その渦度は極めて大きく、気圧と旋衡風バランスしていた。この竜巻の直径は300m程度で、観測されたものとよく対応していた。竜巻の予測は、それをもたらす雲を予測することで実現すると考えられるので、この結果はそれに向けた重要な一歩といえる。
共同研究参加者名簿
| 氏名 | 職名 | 所属機関 | 所属機関所在地 | 備考 |
1 | 坪木和久 | 准教授 | 名古屋大学 地球水循環研究センター | 〒464-8601名古屋市千種区不老町 | 研究代表者 |
2 | 林泰一 | 准教授 | 京都大学防災研究所 | 〒611-0011 宇治市五ヶ庄 | 所内担当者 |
3 | 石川裕彦 | 教授 | 京都大学防災研究所 | 〒611-0011 宇治市五ヶ庄 | |
4 | 竹見哲也 | 准教授 | 京都大学防災研究所 | 〒611-0011 宇治市五ヶ庄 | |
5 | 余田成男 | 教授 | 京都大学大学院理学研究科 | 〒606-8502 左京区北白川追分町 京都大学理学部 4号館地球物理 | |
6 | 板野稔久 | 講師 | 防衛大学校地球海洋学科 | 〒239-8686横須賀市走水1−10−20 | |