熱帯低気圧の強度と暖気核構造の関係

松島 史弥

熱帯低気圧(TC: tropical cyclone)の特徴の一つに TC 中心付近の気温が周囲 より暖かいということがあり、この特徴は暖気核と呼ばれている。暖気核の存在 についてはよく知られているが、暖気核の構造などの詳細については知られて いないことが多い。この研究では気温偏差の極大が対流圏の中層と上層に分か れている二重暖気核(DWC: double warm core)に注目する。DWC がどのように形 成されるか、 DWC が TC の発達にどのような作用を与えているかは TC を理解する のに重要である。多くの先行研究では強い TC の DWC に注目している。一方、こ の研究ではどの強度の TC に DWC が現れるのか、さらにどの段階で DWC が現れる のかという暖気核構造と TC の強度との関係を明らかにすることを目的とする。

この研究では気象庁のメソ気象モデル(MSM: MesoScale Model)と名大 ISEE の 雲解像モデル(CReSS: Cloud Resolving Storm Simulator)の 2016〜2018 年の予 報データを用いる。TC の中心から半径 400〜500 kmの円環領域を環境場として、 高度 2000m 以上における TC の中心から半径 50 km以内の各高度での最大の気温 偏差を求め、極小値よりも 1K 以上大きな値を持つ極大が 2 つ以上あるような気 温構造を DWC と定義する。

TC 強度と DWC の有無の関係について、DWC がある時刻で中心気圧が高く地上風 速が小さいという結果が示された。これによって、弱い TC にも DWC が現れるこ とが示された。さらに、中心気圧の低下率と DWC の有無の関係を調べたところ、 DWC がある時刻で中心気圧の低下率が大きいという結果が示された。これらの結 果から、DWC は発達期に現れる頻度が高いことが示唆された。
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