亜熱帯湿潤域における
メソ対流系内の対流セルの寿命を決定する環境場の特徴

清水 慎吾

亜熱帯湿潤域におけるメソ対流系の形態、及びそれを構成する対流セルの特性を決定している環境場の特徴を明らかにすることが本研究の目的である。亜熱帯湿潤域におけるメソ対流系の事例として、2000年5月24日に関東地方で観測された団塊状メソ対流系と2001年6月から7月にかけて行われた長江下流域梅雨期集中観測で観測された3つの線状メソ対流系を選んだ。これらの4つのメソ対流系をデュアルドップラーレーダー解析、気象研究所非静力学モデル(MRI-NHM)、および気象庁領域客観解析データ(RANAL)を用いて調べた。

デュアルドップラーレーダー解析を行った結果、関東地方で発達した団塊状メソ対流系は、寿命が30分と短い対流セルで構成されるスーパーセル型であることが分かった。また、長江下流域梅雨期集中観測で観測された3つの線状メソ対流系は、寿命が長い(78分)対流セルで構成されるバック形成型レインバンド(BBL 型)と、寿命が短い(30分)対流セルで構成されるバック形成型レインバンド(BBS 型)と、寿命が短い(30分)対流セルで構成される破線型レインバンド(BRS 型)であることが分かった。

MRI-NHMやRANALを用いる事によって、これら4つのメソ対流系は不安定度・環境風の鉛直シアー・水蒸気分布が顕著に異なる環境場で形成された事が明らかにされた。これらのメソ対流系が形成された環境場を比較し、対流セルの寿命を決定する重要な環境場の変数を調べた。

対流セルの寿命は環境風の鉛直分布・不安定度・メソ対流系の後面の中層の湿度によって決定されていることが分かった。特に中層の湿度に注目すると、中層が非常に湿った環境場では寿命の長い対流セル(BBL型)が形成されたのに対して、中層が乾燥した環境場では寿命の短い対流セル(スーパーセル型、BBS型、BRS型)が形成された。

本研究では、不安定度、鉛直シアーだけでなく中層の湿度も考慮することで、北米乾燥域の典型例より寿命が2倍以上短い対流セルで構成されるスーパーセルや、北米乾燥域の典型例より寿命の2倍以上長い対流セルで構成されるバック形成型レインバンドの形成メカニズムを説明する事ができた。

back