海岸付近に停滞する降雪システムの構造と維持過程

大東 忠保

2000年12月から2001年2月にかけて名古屋大学のドップラーレーダを北陸地方の日本海沿岸に設置し、冬季に発生するメソスケール擾乱の解明を目的とした観測を行った。観測期間中の2001年1月中旬には北陸地方の上空に寒気が流入し、北陸地方の特に平野部で大雪となった。そのうち1月15日0730LSTから16日0400LSTにかけての20時間あまり金沢平野の海岸付近に停滞した降雪システムを観測した。海岸付近で降雪システムが停滞することは平野部にもたらされる降雪にとって重要であるが、そのシステムの構造や維持過程は観測によって明らかにされていない。したがって、本研究では2001年1月15日から16日にかけて海岸付近に停滞した降雪システムの構造と維持過程を明らかにすることを目的とし、主にレーダデータを用いて解析を行った。

降雪システムが海岸付近に停滞していた期間は、エコーの形状から2つの期間に分けることができた。すなわち、降雪システム内のエコー強度が1つながりになっている期間1と、降雪システム内に平行な2本の降雪バンド(降雪バンド1・降雪バンド2)がみられる期間2である。期間2のように降雪システム内に2本の降雪バンドがみられた例は過去になく、この期間について詳しく調べた。

解析の結果、期間2でみられた2本の降雪バンドは、エコー強度、エコー頂、エコーの傾き、構成降雪粒子の種類に違いがみられ、全く異なる構造をしていた。海側に位置する降雪バンド1は、季節風と陸風との下層収束に伴う強い上昇流によって形成された降雪粒子によって維持されていた。また、陸側に位置する降雪バンド2は、降雪バンド1において形成された雪結晶が風下に流され、弱い上昇流内で成長することによって維持されていた。

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