中国大陸上で日変化するクラウドクラスターの降水特性

村上 喜章

GAME/HUBEXの特別観測において中国安徽省阜陽に設置された広域気象レーダーが 1999年7月4日から5日と6日から7日に対流性の激しい降水をそれぞれ観測した。 GMS赤外画像によるとこれらは雲頂温度の低い雲塊、 すなわちクラウドクラスターの特徴を示していた。
1998年と1999年のそれぞれ7月1日から19日に発生した クラウドクラスターの最発達時刻や発生位置、 梅雨前線との位置関係を調べたところ、 これら2つのクラウドクラスターは 梅雨期に大陸上で発生する典型的なクラウドクラスターであると考えられる。 その特徴としては、クラウドクラスターとしての 面積(TBB−60℃以下の面積)が最大となる時間帯は夕方から深夜にあるということと、 発生位置が梅雨前線帯やその周辺部であるということが挙げられる。
それら2つのクラウドクラスターの降水特性における共通点は、 相対的に強い降水のピークを与える時間帯は2回存在するということである。 強雨域に関して1回目は1箇所で塊状に発達するのに対し、 2回目は数箇所で分散して発達する。 また1回目のピークは降水面積全体としての発達期に、 2回目のピークは定常期後半から減衰期にかけてそれぞれ現れる。 これは降水域全体としての定常期から減衰期における層状性の降水域内で 対流性の降水域が再発達するということであり、 下層の湿潤な環境が作用しているものと推察される。 さらにクラウドクラスターの発達とそれによる降水強度の時間変化の比較から、 GMSによるクラウドクラスターとしての面積のピークは、 1回目の強い降水域の成長を反映したものであると考えられる。
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