東アジア・北西太平洋域における梅雨期の雲量分布の年々変動

塚本 英士

梅雨前線活動の年々変動を調べるため、 主に上層雲量、降水量、水蒸気量のデータを用いて、 1987年から1998年までの梅雨期における東アジア・北西太平洋域の 月平均雲量分布などの年々変動を調べた。 その結果、6月と7月では異なる特徴が見出された。
6月は、ほぼ毎年、 中国大陸から日本列島にかけて東西に高雲量の帯が広がっており、 年によるその位置のずれも小さいが、 雲量の値は年により増減する。 しかし、1990年、1993年、1997年は、 この高雲量の帯がそれほど明瞭ではなく、 中国大陸と台湾の間に高雲量域が現れ、 また、朝鮮半島と九州で平年より降水量が多かった。
7月は、雲量分布の年々変動が6月に比べて非常に大きい。 最も大きな変動は東シナ海上を中心に見られた。 特に興味深い特徴として1987年から1995年までの2年周期の変化が出され、 雲量分布の特徴は、 偶数年(1988年、1990年、1992年、1994年)と 奇数年(1987年、1989年、1991年、1993年、1995年)とで大きく異なる。 奇数年では、7月でも6月の高雲量帯が高雲量を保つのに対し、 偶数年では7月に東西にわたって全体で雲量が大きく減少し、 東シナ海を中心に低雲量域が目立つ。 偶数年は奇数年と比較して、 7月は降水量も非常に少ない。 このような年では南側からの大気下層での水蒸気輸送量も極端に小さくなっていた。 興味深いことに、雲量の減少が大きい年(1988年、1990年、1994年)では、 太平洋上東経150度付近で南北に伸びる高雲量域が見られる。 この高雲量域は、梅雨前線帯の中でも最も降水量の多い九州域に近い降水量を示す。 そこでは、大気下層に強い南風が見られ、 また、水蒸気フラックスの大きな収束が見出された。
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