対流性降水雲群の発達に関する数値モデリング

佐野 成人

異なった大気環境の中で形成される積乱雲の構造の違い、 積乱雲の組織化の過程、 そして積乱雲および積乱雲群の維持過程を調べるために、 3次元数値モデリングを行った。
多くの対流性降水雲が発生・発達・衰弱した結果、 領域の中央部では鉛直シアが弱くなり、 対流の起こりにくい安定した大気環境となり、 領域に従って発達過程の違う対流性降水雲または対流性降水雲群が現れた。
東側の領域(領域A)と、 中央部(領域C)で長時間維持された対流性降水雲が現れた。 領域Aの対流性降水雲では上昇流域が鉛直シアの風上側に傾くようになり、 下降流域が鉛直シアの風上側に存在する構造となった。 この下降流は東向きの水平運動量を中層が運ぶため下層で収束をおこし、 次々と新たな上昇流を生み出す。これは自己維持型の気流構造である。
領域Cはより安定化した大気に変化した。 この領域では明確な鉛直シアが存在せず、 上昇流域の傾きがはっきりしない気流構造を持った対流性降水雲が現れる。 しかし、このような対流性降水雲の中で、 周りに存在していた他の対流性降水雲からの発散流の助けを借りて維持される 比較的寿命の長いものが現れた。
領域Aの対流性降水雲は、南北方向に列状に並ぶ群を形成していった。 南北にある程度並んだ複数の対流性降水雲が現れると、 これらの対流性降水雲からの発散流が下層で 南北一様な西向きの風とぶつかりあって収束を引き起こすが、 この収束場は下層の西向きの風が南北一様であるために南北方向にのびる傾向にある。 この収束場に沿って、 鉛直シア風下側に再び対流性降水雲が形成されることを通して、 降水雲群が列状になっていく。
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