長時間持続した梅雨前線雲帯の水蒸気場と
非地衡風循環に関する研究
物江 大輔
本研究では、1997年の梅雨期に梅雨前線にともなう雲帯が、
中国大陸から九州地方にかけて約1週間持続し、
九州地方の広範囲にわたって連続的に降水をもたらした現象について解析を行った。
この降水は、局地的な豪雨とは異なるタイプの降水であり、
広域に長時間降水がもたらされる点で重要である。
この現象について、GMSデータと全球客観解析データを主に用いて調べた。
東シナ海付近での雲帯の持続期間は、
水蒸気流入量よりも水蒸気収束量の大きな期間とよく対応していた。
水蒸気収束は、主に非地衡風南北成分(va)によるものであった。
雲帯南側下層(925hPa)では常にva>0であり、
雲帯の持続期間との対応は明瞭ではなかったが、
雲帯南側上層(150hPa)ではva<0であり、
雲帯の持続期間とよく対応していた。
また、雲帯北側下層(925hPa)ではva<0であり、
雲帯北側上層(150hPa)ではva>0であった。
つまり、雲帯をはさんで南側下層(925hPa)では北向き、
上層(150hPa)では南向きの、
北側下層(925hPa)では南向き、
上層(150hPa)では北向きの非地衡風南北循環がみられ、
この南北循環は雲帯の持続期間とよく対応していた。
また、雲帯北側下層(925hPa)にみられたva<0は雲帯の持続期間とよく対応していた。
このva<0の形成により雲帯付近で収束があり、
雲帯の持続には雲帯北側下層(925hPa)におけるva<0が重要であった。
準地衡風運動方程式から求めた結果、
雲帯北側下層(925hPa)で、
非地衡風南北成分(vag<0)が形成された。
このvag<0が形成されるメカニズムは雲帯北側に高気圧が形成され、
vg<0が形成されるからであった。
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