台風の雲域の周期的時間変化に関する研究

小山 亮

1997年の6つの台風について、 静止気象衛星GMS-5の赤外分割窓領域(split window channel)データを用いて 雲活動の時間変化を解析した結果、 雲頂温度の低い雲域の面積が日変化と約10時間周期の変化を示すことが見い出された。
日変化には、台風の雲域の中でもTBB(黒体放射輝度温度)が-40℃以下の雲域、 つまり雲頂が対流圏上層まで達し、 しかも雲上部が光学的に厚い雲域の変化が主に寄与していた。 この変化の極大は1500JST頃、極小は0300JST頃にみられた。 日変化の極大時は、 約9時間前の0600JST頃の活発な対流活動を前兆として起こっていた。 また、この日変化の顕著さは、台風の経路、中心気圧の時間変化傾向、 及びTBBで定義した様々な雲域の面積の時間変化傾向と関連することが示唆された。
周期が約10時間の雲域面積変化には、 TBBが-60℃以下の雲域、つまり雲頂高度が圏界面、またはそれ以上にまでに達し、 しかも雲上部が光学的に厚い雲域が主に寄与していた。 この変化では、極大時には雲頂温度が低い雲域が中心付近に多くみられ、 極小時には分散する傾向がみられた。 変化の極大は、 極大時の数時間前の広域にわたる活発な対流活動を前兆として起こっていた。 このように、これら2つの周期的時間変化は、 前兆となる対流活動の活発化のタイプが違い、 また前兆となる対流活動からの変化の極大までの時間的遅れが、 日変化では9時間、 約10時間周期変化では数時間と異なっていた。
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