停滞性降雨帯の構造と発達過程に関する研究

間瀬 剛史

1997年7月上旬に九州地方で出現した降雨帯のうち、 長崎半島から有明海にかけて出現する停滞性降雨帯(諫早ライン)の構造と発達過程を、 ドップラーレーダーの観測データ等を解析することにより調べた。 諫早ラインは7月上旬に3回発生し、 それらの発生には特徴的な大気状況が存在した。 3つの中で7月11日のケースは、 他のケースに比べて18時間と長寿命であり、 本研究では特にその構造と維持過程に着目し解析を行った。
諫早ラインは多数のセル状レーダーエコーで構成され、 諫早湾上で定常的に存在し、 2〜3時間周期で伸び縮みを繰り返し、 有明海の対岸まで周期的な降水をもたらした。 また、7月11日の諫早ラインは北西領域と南東領域の二つに分かれる時間帯が存在し、 移動方向が上層の西よりの風と一致した。
諫早ラインを構成するセル状レーダーエコーは、 ほとんどが長崎半島の付け根付近から発生しており、 長崎半島の地形によって対流雲が形成、 発達したことが推測された。 長崎半島の付け根付近でセル状レーダーエコーが多数発生した数十分後に 諫早ラインが有明海方面に伸びる傾向があり、 その時のセル状レーダーエコーは 諫早湾上で下層風の水平収束が起こることによって発達し、 有明海の対岸まで多数到達した。
セル状レーダーエコーが長崎半島の付け根付近で発生した時諫早ラインは伸び、 セル状レーダーエコーが発生しなくなった時はほとんどの諫早ラインは縮んだ。 諫早湾上での水平収束は諫早ラインを維持させる上で重要であった。
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