梅雨前線上の長寿命の停滞したクラウドクラスターの
構造と発達、維持過程に関する研究
若月 泰孝
1996年7月5日から7日にかけて、九州南部の東シナ海上で、2つのメソαスケールのク
ラウドクラスターC2、C7が観測された。これらのクラウドクラスターは、梅雨前線の南に
位置する九州南西片の東シナ海上で発達し停滞した。C2、C7の寿命はそれぞれ27時間、18
時間と長寿命であった。これらのクラウドクラスターは、梅雨前線帯に沿った下層ジェッ
トと南からの水蒸気流入に対応して発生していた。クラウドクラスターの降水効率を地域
スケールモデルの出力データ(RSM-GPV)とレーダアメダス合成データを用いて算出した。
C2、C7の降水効率はそれぞれ平均で27%、42%であり、特にC7の降水効率がよい。降水
効率の寄与は、強い降水を伴う対流性の降水現象による寄与だけでなく、層状性の降水
による寄与も大きい。クラウドクラスターの降水効率の約70%が層状性の弱い降水として
寄与していた。
これらのメソαスケールのクラウドクラスターは、メソβスケールの対流雲群とメソγス
ケールの対流雲とで構成され、クラウドクラスターの西側で新しい対流雲または対流雲群
が断続的に形成されることで、全体として停滞していた。また、クラウドクラスター内に
は下層の鉛直シアに直行する走行をもつメソβスケール対流雲群が約5時間周期で発生し、
発達した状態を長時間維持したままクラウドクラスター内を東進した。これらの対流雲群
は、クラウドクラスターの高い降水効率にも大きく寄与しており、その周期的発生と発達
は、クラウドクラスター全体の発達、維持にも重要な役割を果たしていた。
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