夏季における局地風の発達に関する研究

石川 由紀

本研究は、伊勢湾という大きな湾が存在する濃尾平野およびその周辺域を解析対象地域 に選び、夏季の局地風の発達、および内陸への進入に影響を与える因子を明らかにし、局地 風の発達に関する過程を考察したものである。使用したデータは、アメダスデータ、風の鉛 直観測データ、およびNOAA衛星による赤外データである。
その結果、海風、谷風など夏季の局地風の発達、および内陸への進入において以下に 記すような因子の関わりが重要であることが示された。海岸を含む平野部では平野の気温が まず上昇し、谷を有する山間部では谷の両側の斜面の気温が上昇する。平野部では海とその 周辺の陸地の温度差による海風が吹走し、南北に伸びる谷では谷の両側の斜面と谷底との温 度差により谷風が吹走する。その後、山地の加熱効果が顕著になり、平野部では山地斜面と 海との温度差による海風が発達する。外海からの海風の風向と一致するように内陸部に入り 込んだ大きな湾は、摩擦による風速の減衰を防ぐだけではなく、温度傾度を大きくする働きを する。南北に伸びる谷は、外海、湾、平野の南北方向とほぼ一致するため、外海からの海風 に谷風的要素も加わって谷の上限付近まで南風成分を持つ局地風が形成される。南北方向に 入り込んだ湾、その湾とほぼ同じ程度の水平スケールの平野、および南北に伸びる谷、さら にこれらの因子がすべてほぼ南北の直線状に位置する場合には、これらの因子の地理的位置、 および大気への加熱効果の時間変化によって、海風と谷風の性質を併せ持つ局地風が発達す る。この局地風は、約150km内陸部まで進入することが示された。
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