ドップラーレーダ観測による若狭湾周辺の帯状降雪雲の研究
末吉 惣一郎
冬期寒気吹き出し時に日本海上に発生する帯状降雪雲の気流を含めた3次元構造を
明らかにするために、1995年1月13日から14日にかけて若狭湾に現れた帯状降雪
雲を主に2台のドップラーレーダで観測されたデータを用いて解析した。ドップラー
レーダ観測期間中に、雲頂温度の低い大きな雲塊が若狭湾に進入、通過した。この大
きな雲塊が通過する前を期間A、通過中を期間Bとして各期間に現れた帯状降雪雲の
構造を明らかにした。
エコーの水平分布で見ると、期間Aでの共通の特徴は一本のバンド状エコーがはっ
きりと確認でき、まわりにはエコーはほとんど存在しなかった。一方、期間Bでの共
通の特徴は弱エコーが存在する中において強エコー域としてバンド状エコーをとらえ
ることができた。各期間のバンド状エコーの構造は次のようにまとめられる。期間A
ではバンド状エコーに直行する鉛直断面図から上層でエコー後方に強エコー軸が傾き、
気流構造は下層でエコー後方から相対的に風が流入し、上層でエコー後方から流出す
る。エコーに平行な断面図では上層で東北東がわにエコーが傾いている。気流構造は下
層で南西側に向かう流れが卓越し上層では反対の北東側へ向かう流れが卓越する。上
層気流、下降気流の水平分布はバンド状エコー中央部に上昇気流がありその脇に下降
気流が列状に並ぶ。期間Bでは直行する鉛直断面では前部の強エコー軸は上層で前方
へ傾いている。気流構造は下層から中層にかけてエコー後方からと前方からの相対風が
流入し上層でエコー前方へ流出する。平行な鉛直断面では前部のエコーでは北東側へ
傾くが後部のエコーでは傾いていなかった。また気流構造は下層で南西側へ向かう流
れが卓越しており、風速は期間Aよりも速い。上層では南西側へ流れる。期間A、期
間Bのバンド状エコーに見られたこのような違いは期間Aでは、個々の対流セルが列
状に存在、発達、帯状降雪雲を形成していたのに対し、期間Bは対流セルよりも空間
スケールのもっと大きな循環を持つ帯状降雪雲が形成されていたことを示唆している。
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