マイクロ波放射計観測による中層雲の雲水量に関する研究

坂木 直美

低気圧、前線に伴う中層雲を対象として1995年4月から6月に地上に設置した37GHzのマ イクロ波放射計により行った観測にもとづき、鉛直積分雲水量(ILW)を評価し、その時 間変化かあ中層雲内の過冷却水量の空間分布の特徴を調べた。3つの事例について、特徴 的な時間スケール(空間スケール)のILWの変化に注目して解析した結果、他の事例とは 異なり、1つの事例では、(1)空間スケールの数km、および10数kmのILW変化に対応して雲 全体のILWも変化していること、(2)数kmスケールの小さい雲が10数kmの空間スケールで 集団化していること、(3)数kmスケールの雲のILWの変化の幅が10数kmのスケールで変化 していることが示された。この事例は内部重力波の影響があったと推察される。また、 1994年12月から1995年1月にかけてマイクロ波放射計と降水粒子観測プローブ2D-C、2D-P を用いて行われた航空機観測のデータにもとづき、過冷却水量の空間分布と氷粒子の成長 の対応関係を調べた。その結果、中層の雲の雲頂付近、あるいは雲上部に過冷却水が多く 存在したこと、上層雲内の高度(気温−22℃)から中層雲の上部(−10℃)にかけて大きな 氷粒子の数が急激に増加していたことなどが見い出され、中層雲の雲頂付近で氷粒子の効 率の良い成長が行われていたことが推察された。この氷粒子の成長過程は、『上層の雲から中 層の過冷却雲にseedされた氷粒子が、上昇気流により支えられながら中層の雲の上部にと どまり、下から次々に運ばれてくる過冷却水滴をもとに大きく成長し、その後中層雲内を 落下した』ものと考えられる。
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