1. 目的
冬季、シベリア大陸上から寒気吹き出しが起こるとき、暖かい日本海上から熱と水蒸気の供給を受け対流雲が発生する。日本海東部では、これらの対流雲はしばしば日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)上の帯状雲に組織化される。帯状雲上には、メソαからγスケールの渦状擾乱がたびたび発生し、それが上陸する際には突風や活発な降雪がもたらされる。また、帯状雲の北東領域にはTモード(transverse mode)雲と呼ばれる移動方向に直交する走行をもつ雲が形成され、帯状雲とTモードの雲域以外には主にLモード(longitudinal mode)雲が形成される。風速(鉛直シア)が弱いときには、筋上雲ではなく孤立雲群が形成される。
一方、海岸付近ではこれらの対流システムが変質することが知られている。変質とは、具体的にはレーダーエコーの強化や、対流性から層状性への変化などである。この変質の原因には、地形や海陸の熱・水蒸気供給量の変化があげられる。また、海陸の温度差は陸風を形成することが知られており、これもまた変質の原因としてあげられる。冬季に形成される陸風は、暖候期の陸風とは違って暖かい日本海と冷たい陸の大きな温度差によって昼夜を問わず維持されることがある。陸風は季節風が強いときは形成されにくく、等圧線がやや緩み風速が弱まったときに形成されやすい。陸風まで発達しない場合でも、平野部に冷気層が形成されることがあり対流雲の変質の原因となる。これら海岸付近における対流システムの変質過程は、理学的に興味ある現象であるとともに、人口の密集する平野部に降雪を集中させるメカニズムとして社会的にも重要である。
日本海上で発生する様々な対流システムは、気象衛星やレーダーなどによりその存在が知られてきたが、その内部構造や組織化のメカニズム、海岸付近での変質過程を気流場を含め詳細に調べた観測例は少ない。そこで、名古屋大学ではこれらの解明を目的とし、2台のドップラー レーダーを北陸地方に設置し観測を行った。
2. 手法
1.ドップラーレーダー観測
1ボリュームスキャン5分間(PPI 11仰角)、または6分間(PPI 11仰角 + RHI 1方位角)。
2. 降雪粒子接写観測
3. 航空機からの雲の写真撮影
3. 場所
1.ドップラーレーダー観測
赤レーダー 〒929-0328 石川県河北郡津幡町字湖東 津幡排水機場
北緯36度40度42秒 東経136度42分17秒 高度5m
青レーダー 〒923-1278 石川県能美郡川北町字朝日 手取川堤防(南側)
北緯36度27度55秒 東経136度29分17秒 高度15m
2. 降雪粒子接写観測
ドップラーレーダー観測地点と同じ。
3. 航空機からの雲の写真撮影
福岡−札幌定期便。
4. 期間
2002年12月18日(水)〜2003年2月
・ドップラーレーダー設置日 赤レーダー 2002年12月18日(水)・26日(木)
青レーダー 2003年1月7日(火)
・IOP1 2003年1月13日(月)09JST〜1月20日(月)09JST
・IOP2 2003年1月25日(土)09JST〜2月1日(土)09JST